控訴人意見陳述 (2015/2/4)
平成26年 (ネ)第5662号 損害賠償請求事件
控訴人 柳沼英夫
被控訴人 神奈川県
意見陳述書
2015年2月4日
東京高等裁判所第20民事部御中
控訴人 柳沼英夫
1
私は、2004年4月27日、音楽室での清掃時に雨漏りを発見しました。
担当生徒が悲鳴を上げるほどのひどい雨漏りでした。
美術室から大きな盥を数個運び、自宅からブルーシートを持参してしのぐ状態が5か月続きました。
9月、やっと防水工事が行われることになり、ほっとしたのもつかの間、9月中旬、防水工事開始直後からシンナー臭が音楽室、書道室を中心に芸術棟に拡がり、事務長に苦情を訴えました。
2
10月頃から芸術科の2名の女性職員が体調不良になり、私は教科代表として、事務長や教頭、校長、施工業者との交渉の前面に立つようになりました。
訴えに対して、情報・対策がなく不安が深まりましたが、私も、2人の芸術家の先生も、生徒を守ろうと必死で学校に対策を訴えました。
そんな中、県からは、「臭気は窓から入っている。窓を開けて換気せよ」という指示が繰り返されるだけで、VOCの濃度の測定すら行われませんでした。
12月1日になって、やっと、学校薬剤師による簡易検査が行われ、指針値を大幅に超えるVOCS濃度が検出されました。
既に工事から2か月以上が経過していました。
3
ところが、県は、その後も正式な濃度測定を行おうとせず、シンナー臭発生から140日も経過した2005年1月31日になって、やっと検査を行ったのです。
時間の経過と気温の下降とともに、少しずつ、濃度が下がっていたのだと思います。
12月には指針値を超えていたのが、その約2か月後に行った検査では、指針値内との結果でした。
4
横浜地方裁判所は、工事から2か月後の12月1日の指針値越えの数値を全く考慮しない上に、その約2か月後の1月31日の指針値内の結果だけを評価して、保土ヶ谷高校でのVOC濃度は指針値を大幅に超えているとは言えないと判断しました。
約5か月間の異常な臭気は全く考慮されず、簡易検査で指針値を超える検査結果もすべて無視されました。
その後2005年4月下旬、気温上昇に伴って教室・廊下の有機溶剤の濃度が上昇し、308名もの生徒が校舎内で体調不良を訴えました。
それでも安全だったのですか。
5
当時のアンケートから、事故当初から8か月もの間、生徒たちが体調不良を感じていたことが明確になりました。2005年5月3日以降の新聞には、保土ヶ谷高校シックスクール事件として連日記事が掲載され、NHKでも放送されました。
6
私が頭痛や不安感などの体調不良を自覚したのは、2005年1月頃です。
5月頃には、頭痛や不安感という神経症状を自覚しながらも、私は、全ての再改修対策会議にも出席していました。
また、職員会議では、怒りが爆発し、帰宅後は身体が疲れ切っているのに眠れませんでした。
神経症状に悩み、病院を受診したのは、2005年11月です。
そして、2006年3月頃からは関節の痛みが激しくなり、9月には北里研究所病院で診察を受け「シックビルティング症候群・化学物質過敏症を発症」と診断されました。
以降、体質改善療法を現在まで続けています。
道路工事や、室内の臭気、車内の臭気、煙草の煙によって、気管支が痛み、頭痛等の症状も続いております。
通常の生活ができません。
心身ぼろぼろの状態で、32年6か月勤務した教職を2014年3月31日付けで、早期退職しました。
学校の教壇に今後、立つことはできません。
私に、健康な体と、生徒と共に学ぶ場を返して下さい。
10年の貴重な時間を返してください。
そして、学校は、生徒の健康を守らなければなりません。
勇気をもって教育の原点を守ってください。
以上